博多に本店のあるもつ鍋店が、全館リニューアルを行う大阪駅ビルに出店するにあたり、既存の店舗イメージから脱却した新しい空間イメージを求めていました。「鍋をつつく仲を増やす」というお店のコンセプトを通じ、我々は、博多の祭りのにぎわいに現れるような活気あるにぎやかな食事の空間こそ、もつ鍋を囲むにふさわしいと考えました。
そこで、天井から無数に吊り下がる金色の光の反射板が客席全体を覆い、ランダムにきらめく光の断片が頭上を漂う空間としました。反射板は十字の断面形状にすることで、一方向からの光を直交する2面が受け、反射で明るくなるのみでなく、光を遮ることで影を生み出し、提灯に彩られた祭りのにぎわいを、光の明暗で抽象的に表現することを目指しました。
反射板は、光の明暗によるにぎわい、店舗奥行きの広がり、客席の親密さ加減の演出や、空調と消防設備の配置などを考慮して、3種類の異なる長さのものを千鳥状に配置しています。反射板を照らす光源についても、調光付きスポットライトにより明暗の繊細なコントロールを行いました。
客席のレイアウトは、団体客と個人や2人組み客の割合に合わせて着脱可能なのれんで仕切ることで、座席数の変化に対する調整を可能としています。隣接する客同士のプライバシーを考慮しつつできるだけ多く席数を確保しながらも、透け感のある生地ののれんの重なりにより、限られた空間の中に奥行きを感じられるよう考えています。