イラク北部に住むクルド人は前政権により迫害され続けてきました。1988年に、化学兵器の被害にあったハラブジャでは、いまだに、様々な長期的後遺症が残っています。その中でも深刻なのが新生児の先天性異常で、他地域に比べ死産や異常分娩、新生児の先天性異常の比率が高くなっています。この計画は、そんなハラブジャの新生児と妊婦のための母子病院です。
この建物の正面には列柱と大きな壁が象徴的に配され、列柱は建築で言う「秩序」を意味し壁は「守る」ということを意味します。
そしてこの列柱と壁をくぐると、強固な外観に対して中は透明なやわらかい自由な空間になっており、自然光を取り入れるために中庭空間が配され日中は電気をつける必要のない明るい空間で建物の諸室が繋がっています。
弾圧を受けた人たちが、ここで新しい秩序によって守られ、安心できる柔らかな空間のなかで治療を受けることができるようになっています。